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和歌山地方裁判所 昭和56年(わ)361号 判決

本店の所在地

和歌山県伊都郡高野口町大字名古曽三五〇番地の九

法人の名称

中難観光株式会社

代表者の住居

右本店の所在地に同じ

代表者の氏名

中西絹代

本籍

和歌山県伊都郡九度山町大字九度山一、六七一番地

住居

同県同郡高野口町大字名古曽三五〇番地の九

金融業

中西康悦

昭和一〇年一月一五日生

右被告人会社及び被告人に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官宮越健次出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人会社中難観光株式会社を罰金一五〇〇万円に、被告人中西康悦を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人中西康悦に対しこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

右猶予の期間中同被告人を保護観察に付する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人会社中難観光株式会社は、和歌山県伊都郡高野口町大字名古曽三五〇番地の九を本店とし、大阪市南区難波新地一番町二九番地の六において「トルコ難波城」の名称で特殊公衆浴場業(個室浴場トルコ風呂)を営むもの、被告人中西康悦は、被告人会社の実質的経営者としてその業務全般を統轄しているものであるが、被告人中西は被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一  昭和五三年五月三一日から翌五四年四月三〇日までの事業年度における所得金額は五、六七一万一、〇三三円で、これに対する法人税額は二、一八四万三、五〇〇円であるのに、公表経理上売上げの一部を除外するほか、決算に際して売上げを除外し、これに見合う架空の借入金を計上するなどの不正手段により所得を秘匿したうえ、昭和五四年六月三〇日所轄粉河税務署において同署長に対し、所得金額が四四万八、五五九円、これに対する法人税額が一二万四、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同事業年度の法人税二、一七一万九、〇〇〇円を免れ、

第二  昭和五四年五月一日から翌五五年四月三〇日までの事業年度における所得金額は七、六三八万八、一八一円で、これに対する法人税額は二、九七一万五、二〇〇円であるのに、売上げの一部を除外して仮名普通預金に入金するなどして所得を秘匿するほか、被告人会社の従業員井上章個人の事業であるごとく仮装し、同人名義で所得税確定申告書を提出するなどの不正手段により、法人税確定申告期限である昭和五五年六月三〇日までに、所轄粉河税務署長に対し、法人税確定申告書を提出せず、もつて不正の行為により同事業年度の法人税二、九七一万五、二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人中西康悦の当公判廷における供述

一、被告人中西康悦の検察官に対する昭和五六年六月一〇日付、同年同月一二日付及び同年同月一七日付(検乙第一五号のもの)各供述調書

一、被告人中西康悦の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一、被告人会社代表者中西絹代の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書(二通)

一、井上章(二通)及び松野輝康の検察官に対する各供述調書

一、井上章(昭和五五年一一月二六日付、同年同月二七日付、同年同月二八日付、同年一二月一五日付、昭和五六年一月二〇日付、同年三月一八日付及び同年四月一一日付の七通)、松野輝康(六通)、池田博、南畑禮市、亀井友政及び大木春己の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、大蔵事務官作成の昭和五六年一月八日付、同年同月一七日付、同年二月二〇日付、同年三月二日付、同年同月二七日付及び同年四月二一日付各査察官調査書

一、国税査察官作成の写真撮影報告書

一、松石圭司、山岡俊夫、角屋吉次、森野茂、相良弘隆及び清水隆男作成の各確認書

判示冒頭の事実につき

一、登記官作成の登記簿謄本

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲第四号のもの)、脱税額計算書説明資料(検甲第五号のもの)、査察官調査書(昭和五六年四月二日付)及び証明書(検甲第五二号のもの)

判示第二の事実につき

一、井上章の大蔵事務官に対する昭和五六年一月三〇日付質問てん末書

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲第六号のもの)、脱税額計算書説明資料(検甲第七号のもの)及び査察官調査書(同年三月九日付、同年四月一日付検甲第三六号のもの及び同年四月一四日付の三通)

(確定裁判)

被告人中西康悦は、昭和五六年五月七日大阪地方裁判所で売春防止法違反罪により懲役一年四月(四年間執行猶予、罰金刑併科)に処せられ、同年同月二二日確定したものであつて、この事実は判決謄本及び被告人中西康悦の検察官に対する昭和五六年六月一〇日付供述調書によつて認める。

(法令の適用)

被告人会社の判示第一、第二の所為はいずれも昭和五六年法律五四号による改正前の法人税法一五九条、一六四条一項にそれぞれ該当するところ以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人会社を罰金一五〇〇万円に処し、被告人中西の判示第一、第二の所為はいずれも行為時においては昭和五六年法律五四号による改正前の法人税法一五九条に、裁判時においては改正後の法人税法一五九条に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があつたときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上の各罪と前記確定裁判のあつた罪とは刑法四五条後段により併合罪の関係にあるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ていない判示各罪について更に処断することとし、なお右の各罪もまた同法四五条前段により併合罪の関係にあるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条二項を適用してこの裁判確定の日から四年間右の刑の執行を猶予し、なお同法二五条の二・一項前段により同被告人を右猶予の期間中保護観察に付することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 浦上文男)

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